嘘をもうひとつだけ(著:東野圭吾)を読んで
おすすめ度:★★★☆☆
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- 独立した5作品が盛り込まれている加賀恭一郎シリーズの短編推理小説集
- 気軽に読むことのできるおすすめ作品
<嘘をもうひとつだけ>
元バレリーナ女性の転落死を題材として、主人公女性の目線で書かれている。そこに加賀恭一郎が捜査に訪れ話が進んでいく。
タイトルにも含まれている「嘘」がキーポイントになるだろうと考え読み進める。短編ということもあり、スラスラと読むことができた。
<冷たい灼熱>
サラリーマンの夫が自宅に帰った際に、家で妻が死んでいるのを発見。また、息子も行方不明。そこから話が始まる。主人公は、サラリーマンの夫。
結末は自分が想像していたものとは全く異なっており、自分の中では一番印象に残っている作品。
<第二の希望>
娘を想うシングルマザーが主人公の話。自宅で交際相手が死んでいたことから話が進んでいく。序盤のうちから何となく犯人は推測ができた。しかし、殺人方法は全く予想ができないものであり、さすが東野圭吾だと感じる作品でもあった。
<狂った計算>
交通事故で夫を亡くした女性が主人公の話。読み進めていくうちに、女性の不倫相手も出現。なんとなく、その不倫問題からの事件かと推測しながら読み進める。やはり自分の推測を遥かに超えていく物語であった。
<友の助言>
加賀の学生時代の友人が主人公の物語。この物語は人が死なない。加賀が友人のことを心配し、推理を行う。この物語を読んだ感想としては、洗脳?されるとこれほどまでに周りが見えなくなってしまうのかと恐怖を感じた。
全体を読んだ感想としては、すべての物語のキーワードに「嘘」が含まれていると感じる。1つの嘘を隠すために嘘が重なっていく。昔からよく言われることではあるが、1つの嘘が取り返しのつかないものになっていくことを深く感じさせる作品であったと思う。
あまりネタバレにならないように留意しながら書いたため、1つ1つの物語の感想が薄っぺらいものとなっているが、1つ1つの物語は中身が濃いものであったと思う。短編小説となっているが、長編であっても読み応えのある物語だと感じる。今後も東野圭吾の作品を読んでいきたいと思う作品であった。