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~無気力な三十路公務員の雑記ブログ~

「スクラップ・アンド・ビルド」(著:羽田圭介) 感想

 

おすすめ度:★★★☆☆

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第153回芥川賞受賞作。「火花」(著:又吉直樹)と同時受賞したことで、あまり知名度が上がらなかった印象。しかし、羽田圭介氏自身はバラエティー番組やクイズ番組にもよく出演されているので、知名度はあるのかもしれない。芥川賞受賞者なのだから知名度はあって当然なのだが。

 

【あらすじ】

 主人公「健斗」は同居している介護が必要な祖父の願い「苦しまずに早く死にたい」をかなえるべく、徹底的な手厚い介護によって本人のできることを奪い、尊厳死への道を進む計画を思いつく。健斗の筋トレや転職活動、祖父との触れ合いのなかでの気持ちの変化や成長についてを書かれた小説。

 

 

【感想】

  • 健斗のこころの変化

 祖父の口癖である「早く死にたい」との言葉を聞き、穏やかな最期を迎えさせたいと真剣に考えます。徹底的な手厚い介護をすることで祖父自身ができることを奪っていき、尊厳死させると。その考えを正当化し追求し実行していきます。同時に彼自身は、日々筋トレに励み、転職活動をしている身。ストイックに筋トレする彼は、怠惰な性格の彼女に対して軽蔑している部分も表現されています。それぐらい自分を正当化している彼ですが、あることを境に祖父の本心を探ろうともします。そのような彼の気持ちの変化がうまく表現されていて、物語に熱中させるひとつの要因だと感じました。

  • 祖父の優しさ

 日頃は「早く死にたい」との言葉を吐き続けているが、家族の目がないところで自分の好きなことをしている祖父。実際には、生きることに執着していて所々に健斗へも助けを求めている。母は、祖父に対して冷たく接しているため、健斗へ助けを求めているのだが、健斗の転職が決まり家を離れる際には、健斗にすがりつくのかなと思ったが「気にせず頑張れ」の一言。祖父が孫に対する愛情を感じられる一言であり、それと同時に健斗自身も自分が弱い存在であることを思い出すきっかけの一つになった。

 

 

【まとめ】

 近年、社会問題となっている「老人介護」や「高齢化社会」を題材に若者の成長をメインに書かれた非常に読みやすい小説であった。芥川賞受賞作ということで、難しい内容なのかと意気込んで読み始めたが、面白い内容であったためスラスラと読み進めることができた。自分のような読書初心者にもおすすめできる小説であった。

 

 

 

【最後に】

 自分の祖母も介護が必要な年齢となっており、この本で書かれている「老人介護」は他人事ではない。自分自身は、同居しているわけではないため、健斗ほど介護に携わることはないが、介護の大変さを感じた。自分の祖母も健斗の祖父と同じく「早く死にたい」とよく言っていたこともあって、他人事と思わず読み進めることができたこともこの本と出会えてよかったと思える一つの要因かもしれない。